今回も、防災・BCP・リスク管理の専門家の森健さんによる連載記事をお届けします。
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久しぶりに通常方式でコラムを書きたいと思います。久しぶりなので、なぜか新鮮な感覚があり不思議な気分です。
さて今回は、企業の風水害対策についてです。これから日本国内は本格的な「雨季」に突入しますので、念のため対策の再点検をいたしましょう。
リスク情報の収集
まずはハザードマップ!です。
自社拠点の浸水リスクを予め確認しておきましょう。水は高きより低きに流れますので、ハザードマップの想定はかなり正確ですし、ハザードマップの想定に近い形で水害も発生しています。
同時に、時には地元自治体の防災部門を訪問し、ハザードマップなどの資料提供を求めるなどする等、防災担当の方とコミュニケーションをとっていただくことも有用です。基本的に自治体は住民や地元企業(「企業市民」ですね)に対してオープンですので、気軽に訪問していただくと良いと思います。
この際、当該自治体の危機管理に関する取組み姿勢や、市町村長の考え方、最近の防災行政上の課題感などについても、時には観察し、時にはインタビューを通じて情報収集すると良いと思います。どのようなケースに避難指示を出すことを想定しているかを確認しておくと、これが貴重な参考情報にもなります。
企業がそうであるように、自治体もトップの考え方によって、危機管理能力の質も、これを支える組織の風土も千差万別です。企業の防災担当者としては、直にこれを自分の眼で確かめることも大切です。
拠点内外の点検 ~変化点を中心に~
また同時に、自社拠点の外周を目視その他の方法で点検し、建屋その他の施設・設備に異常がないか確認しましょう。側溝に落ち葉が詰まっているなどの見落としはないでしょうか。拠点付近の水路の水位が例年より高くなっていないか、周辺の中小河川で護岸工事を実施している(その結果氾濫しやすくなっている)などのリスクはないか、よく観察し、かつ想像力を働かせて、徹底して課題を洗い出しておきましょう。
拠点の内部についても、「土のう」は古くなっていないか、破れていないか、数は十分かなどもチェックし、土のうや止水板設置については、定期的に設置訓練を実施しておきましょう。
土のうも止水板も短時間の対策としては有効ですが、一定の水位を超えてしまうと構内浸水のリスクが高まります。この機会に拠点の風水害対策のBCPについても再点検をしておきましょう。浸水があった場合には、粒子の細かい泥が構内に侵入し各種設備の洗浄が必要になります。状況によっては修理若しくは交換が発生することも考えられます。また食品メーカーなどの場合は、復旧の仕上げとして衛生面の点検も必要となり、復旧対策に対応してくれる業者の確保に苦労する可能性もあります。特にBCPの「現地復旧対策」について、「具体的に対応できるか?」と自問自答しつつウォークスルー型で点検をいたしましょう。
従業員の労務管理
さらに風水害発生時には、従業員の労務管理方針について、社内で一定の合意形成が必要になる場合が発生します。例えば、明日は台風が接近し交通機関の運休が想定されるような場合の出退勤の対応方針については、予め関係部門で基本パターンを整理しておき、迅速な意思決定・合意形成ができるように備えておきましょう。従業員の皆さんへの案内文も雛形を用意しておくと、なお良いと思います。
風水害は地震と異なり、多少のリードタイムもあり、ある程度の予測もできます。だからと言って油断は禁物です。今年も対策の総点検をしつつ、抜かりなく風水害時期を乗り切りましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
以上