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新任役員が押さえておくべきBCPのポイント② 事業部門担当役員編 | KKEの 企業防災・BCPコラム

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新任役員が押さえておくべきBCPのポイント② 事業部門担当役員編

防災・BCP(事業継続計画)に関する取組みについては、これまで多くの企業で「管理部門主導」で進められてきたり、また事業部門で独自の取組みが一定程度行われているものの全社的に共有されていない状況だったりということが未だに散見されています。

筆者自身も管理系部署の方々と協働してBCPの取組みを推進することが多いわけですが、あえて今回は事業部門サイドの視点に立って、特に「事業部門担当役員」の目線からどのような点に留意すべきか概観したいと思います。

BCPの主役は事業部門

当たり前と言えば当たり前ですが、BCPは「事業継続計画」ですから、本来はBCPに関する取組みは事業部門が主役になるべきものです。

しかし総務部が災害対策としての防災を所管していた関係で、総務部がBCPも所管することになってしまい、まだまだ主役の座が管理部門となっているケースも多いようです。

この点、BCPについて実効性の高い計画を策定し、各部門に確実に実装している企業の共通の特徴は「BCPの責任者は事業部門の担当役員である」という点について、社内規程やマニュアル上明文化し、責任の所在を明確にしている点にあります。

「BCPは大変な仕事だ」という誤解を解く

もちろんこのことは、「全ての責任を事業部門が負う」ということを意味しているのではありません。事業部門は事業の復旧戦略・代替戦略について、通常業務の延長線上で、災害発生時にも対応できるように必要な「事前対策・準備」を実施し、発災時の対応についても平時から訓練で「実行できるよう」に鍛えておくという責任のことを意味します。

しかし現実には、事業部門の責任の所在について社内で不明確になってしまっていたり、事業部門は実際には一定程度BCPに取り組んでいるのに、意図的にこの話題(BCPのこと)を事業部門が避けようとするという現象が起きがちです。

おそらくここには、BCPは膨大な量の計画を策定し、その基礎資料も膨大に用意し、一度その取組みを開始したら業務負荷が大変なことになるという「誤解」も一定程度あり、だから事業部門が二の足を踏んでいるのではと感じられることもしばしばあります。

新任の事業部門担当役員として

前述のような一般的傾向を踏まえた上で、新任の事業部門担当役員の皆様には、ぜひ次の視点で自社(自社グループ)のBCPについて順次点検を実施し、BCPの実効性向上につなげて頂きたいと思います。

まず自社のBCPについて、現時点でどの部門が所管しているか確認の上、次に当該所管部門と現状について正直に十二分に情報共有を実施する。その上で各事業部門の管理職以上(部課長級)を招集し、BCPに関する研修を実施して基本的な考え方を統一した上で、年度単位の事前対策計画と、発災時の復旧・代替戦略の策定など自社の防災・BCP上の弱点補強に着手するというのが基本的な流れでしょうか。

このときに特に意識して頂きたいポイントは次の2点です。

1点目は「BCP」という壮大な計画を策定するのが目的ではなく、自社の防災・BCP上の弱点を確実に洗い出し、いわば「弱点補強」を通常業務として行っていくのだという点です。換言すれば、この視点でいうと、既に取り組んでいることも多い点に気づき、これまでの取組みを整理整頓するという意味合いもある点に気づかれると思います。

2点目は、最終的には全社的意思決定(経営判断)につなげるという意識を持ち続けるということです。事業継続は経営そのものですから、事業部門の努力も大切ですが、最終的には出来ること・出来ていないことを整理し、対策の方向性を案としてまとめ、所要コストも示した上で「経営判断」を都度仰ぐ必要が生じます。

BCPは全社的な企業の存続をかけた経営戦略の一つだということを踏まえて、経営層全体と上手に連携しながら進めて頂くことがとても重要なのです。

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
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