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自治体の防災・危機管理と企業のBCP~実は役に立つ自治体情報~ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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自治体の防災・危機管理と企業のBCP~実は役に立つ自治体情報~

筆者は自治体職員を約12年、企業人を約10年経験した後、コンサルタントとなりお陰様で今月末で満7年、来月から8年目に突入いたします。ちょっと変わったキャリアですので、お客様は半数が自治体関係の方々、また半数が企業の方々という感じになっています。

お客様とのコミュニケーションを通じて、また筆者自身の実務経験から感じますのは、自治体も企業も抱える課題の本質にあまり差はないのではないかという点と、さらには「相互参照」のような取り組み、つまりお互いの取組みを共有しつつ地域一体となって防災・BCPの推進につなげることができれば「実効性向上」になるのではという点です。本稿では民間企業の視点に立って「自治体情報を参照する」お話をさせていただきたいと思います。

自治体や自治体職員に対する正確な理解が必要

まず前提としては、自治体や自治体職員に対する正しい理解に基づいて、相互参照を開始する必要があるという点に注意が必要です。

筆者自身もかつては誤解し、また同時に刮目(かつもく)したところですが、自治体というと「お役所仕事」の名のもとに様々な批判をされますが、実は一部の自治体を除き、多くの場合実態は社会の一般的評価とは異なるものであるという点です。

限られた予算を「最小限の経費で最大の効果」をあげるよう有効活用し(地方自治法にその旨の明文規定があります)、議会への説明責任を果たして予算を編成し、また住民からの様々な要望にできる限り応え、かつ法令の枠組みを尊重して仕事を進めることは、かなり難易度の高いものです。

原則「情報公開」の世界で業務を進める各自治体は、不祥事も当然情報公開ですので、これが原因でネガティブなイメージを過度にもたれている可能性がありますが、例えば民間企業であれば「コンサルに丸投げ」するような案件も、経費削減の視点から職員自ら考えて対応するということも多くあり、各職員は非常に鍛えられている場合が多いのです。
また民間企業同様、自治体といっても千差万別で「広域団体」である都道府県と「基礎的団体」である市町村は役割が異なりますし、職員の行動特性も差があります。また地域によっても目に見えない様々な差、地域ごとに異なる組織の風土のようなものがあり、上場企業といっても千差万別である民間の例とあまり差はありません。

自治体の防災・危機管理能力

このような自治体ですが、防災・危機管理・BCPについては、民間企業に勝るとも劣らない能力を有している場合があります。理由はシンプルで、「対策本部体制」をとる(危機管理体制に切り替える)という対応は、自治体のほうが圧倒的に経験値が高いからです。毎年のように発生する風水害、散発する直下型地震、コロナ禍といったように、近年は危機管理体制に切り替える頻度も高まっているように感じます。

自治体が自然災害対応の一環として「災害対策本部」を設置したり、また平時の備えとしてBCP(自治体では「業務継続計画」と呼びます)を策定して維持管理することは、住民の安全を守るという行政の根本的役割に直結することですので、これらの業務に関する住民の期待とともに、職員への良い意味でのプレッシャーは強く、特に防災・危機管理に関して「先進自治体」と呼ばれる団体の取組みは、参考になる点が多くあります。

自治体のどのような点を参考にすべきか

具体的には、例えば災害が発生した際の「被害想定」に関する情報は、民間企業にとって非常に有用です。被害想定は被害の標本のようなもので、現実の災害は想定通りには起きませんが、事前対策を洗い出すという視点で、また緊急時の対応戦略を整理する「前提条件」を整えるという意味で、自治体の被害想定を積極的に活用すべきと思います。
例えば静岡県庁では「静岡県第4次地震被害想定/被害・対応シナリオ」という資料を策定しています。これは、実際の災害時に地域社会にどのような事態が発生し、時系列に地域の各主体がどのような対応をすべきかを検討するために非常に有用な資料で、企業のBCP策定においても参考になると思います。

また実際に被災した自治体ごとに、個々の災害対応を詳細に振り返り、検証した結果を「検証報告書」の形でホームページ上に開示しているケースも近年多くなりました。これらの資料を熟読し、生々しい現実の課題を深く理解することも、企業の防災・BCPの実効性向上に資するのではないでしょうか。

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

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