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【BCP実践講座④】感染症パンデミックの再来に備える~コロナ禍第6波に対して感じること~ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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【BCP実践講座④】感染症パンデミックの再来に備える~コロナ禍第6波に対して感じること~

本稿執筆時(2022年1月)、日本国内はコロナ禍第6波に見舞われ、例えば東京都においては1日当たりの新規感染者数が1万人を超えはじめています。

今回は、この第6波への対策を考えつつ、近い将来襲ってくるであろう「次のパンデミック」への対応も視野に概観していきたいと思います。

コロナ禍第6波に思うこと

今回の第6波で特徴的な事象は(筆者だけの印象かもしれませんが)、経済団体や自治体のトップが「BCP(事業継続計画、業務継続計画)」の再点検を促すメッセージを発出し、国会においても「BCP」という用語が飛び交うようになったことです。

その背景には、オミクロン株という「感染力が強いウイルス」に対して、現下の状況のように感染者が爆発的に増える状況下で、いかにして社会的機能を維持するかという喫緊の課題があるからです。よく「エッセンシャルワーカー」という言葉が用いられますが、まだその用語の定義自体は曖昧さを残しているものの、考え方は同様と思います。

思い出してほしい「2009年」

今回の第6波の対応を概観していると、筆者は、2009年の新型インフルエンザ(H1N1型)・パンデミックの当時を思い出します。当時筆者は、自動車部品メーカーでリスク管理全般を担当していましたが、2008年(リーマンショックの頃)に新型インフルエンザ対策の予算を何とか獲得し(当時の社長・経営層の「先見の明」に感謝です)、2009年3月までに事前対策を完了し、翌月の同年4月にメキシコの「豚インフルエンザ」騒動に端を発するパンデミックが始まり、事前対策完了直後に即危機管理体制へ移行というドラマティックなあの時期を思い出します。
2008年当時は、各企業のリスク管理担当者の念頭にあったのは、インドネシアを中心に発生していたH5N1型の強毒性の鳥インフルエンザが「人への罹患」を起こしていて、これが「ヒトーヒト型」に変異したらという危機感の下、各社対応を検討している状況でした。

その際、筆者自身は、(Ⅰ)危機管理体制の確立、(Ⅱ)従業員の安全確保、(Ⅲ)事業継続力の強化の3つの視点から対応戦略を整理しました。特に「(Ⅲ)事業継続力の強化」については、当時の筆者の所属する企業は「社会機能維持者」には該当しなかったので、拠点周辺の感染状況を考え、政府・自治体の要請に応じて「一時的に事業を休止する」ことも戦略に組み込んで議論を進めました。
その一方で当時のリスク管理担当者の議論や各種ガイドラインでは、「社会機能維持者」は、感染拡大状況にあわせ感染対策を強化しつつ、交代制を導入したり、クロストレーニングの成果を発揮して他部署のバックアップにまわるなどの対策を実行すべきだという議論がなされていました。実はこの議論が今まさにあてはまるのではないかと考えているのです。

いつか思い出すことになる「2020年」

2009年当時、筆者は、自治体での実務経験から、企業においても将来に備えて「対応記録」を残すべきだと講演の場などで主張していました。そして11年後、敵は異なりますが、新型コロナウイルスが襲い掛かってくることとなってしまいました。

実務家の皆様に改めてお願いしたいのは、第6波対応が落ち着いてからで結構ですので、今回も対応記録を残し、単に記録するだけではなく検証し(流行の波ごとの検証が必要と思います)、そのうえで、次世代の担当者へ手紙を書くつもりで、今回の教訓を引き継ぐ準備を今からして頂きたいということです。

そして引継ぎにあたっては「知識偏重」になることなく、戦略的視点とか、負けない戦いを進めるために何が必要かとか、情報が少ない状況下でどのような判断がより良いのか、なぜ自社のBCPは機能したのか(あるいは機能しなかったのか)といった「危機管理」、「実務・現場」、「問題解決」的な諸視点を加味して頂くと良いと思います。

実はこれらの備えが、次の感染症パンデミックの再来に備える第1歩となるのです。

以上

森総合研究所代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
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