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【BCP基礎講座③】 現地復旧戦略と代替戦略 | KKEの 企業防災・BCPコラム

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【BCP基礎講座③】 現地復旧戦略と代替戦略

今回は、防災・BCPの本質の一つである「現地復旧戦略」と「代替戦略」について考えてみたいと思います。
災害発生時に自社の重要拠点の被害を軽減するためにどのような事前対策を実施するのか、また重要拠点を早期復旧するために必要な対応は何か、さらには万が一重要拠点が復旧困難な場合にその機能をいかに他拠点で代替するかという課題について、重要な視点を提示していきたいと思います。
この点について、本来は、自社の「事業内容」、「製品特性」、「拠点展開状況」などを踏まえて戦略・基本方針を策定すべきなのですが、それらを軽視して教科書通りの戦略を採用しているBCPも散見されますので、注意が必要です。

1:「現地復旧戦略」が防災・BCPの基本

まず現地復旧戦略についてですが、これが防災・BCPにおける基本中の基本です。
これは、自社の重要拠点(本社や工場など)を災害に強い拠点にするという問題で、なるべく被災しないように、また被災しても早期に復旧できるように様々な対策を実施することで、換言すれば防災対策におけるハード対策・ソフト対策の問題です。
現地復旧戦略について重視して頂きたいのは、必要な「ハード対策への投資」を実施しているかという点です。ハード対策つまり建屋の耐震化や施設設備の耐震固定など、対策を実施しておけば防げる被害は多く存在するので、この点について手抜きをすることは禁物です。2008年のリーマンショックや昨年度からのコロナ禍など、時に企業を巡る経営環境が激変し、一時的に対策実施を延期することとなったとしても、速やかにこれを再開して早期に完了することが重要です。
また津波などの対策困難なリスクについては、自社拠点を津波の浸水想定域から安全なエリアへ移転することも重要でしょう。また重要設備を上層階に移設することなども次善の策として考えられると思います。これらの対策を「計画的に」進めることが重要で、平時の委員会活動を機能させて、委員会活動を通じて確実な進捗管理をすることが求められます。
さらに現地復旧戦略については、ついつい工場などの事業系の拠点が重視され、管理部門を中心に要員配置されている拠点としての「本社」に関する対策が軽視されているケースも見られます。災害規模が大きくなればなるほど、本社が早期に機能しなければ「対応の司令塔」なしで戦うこととなり「戦略的な対応」が難しくなる点、また都市部に本社を置く場合には「従業員の一斉帰宅抑制」という大きな課題を併せ持つ可能性があることを軽視せず、本社という拠点と本社部門の防災・BCPも対策の有効性を点検しておきましょう。

2:「代替戦略」は平時から経営判断として採用する

次に代替戦略についてですが、これは重要拠点の現地復旧が不可能な場合に、他の拠点においてその機能を一時的に代替するという戦略です。
代替戦略を検討する上で重要な視点は、そもそも代替戦略は非常な困難を伴う戦略で、平時からの周到な準備が必要だという点です。
具体的な代替戦略の場面、例えば「国内の工場Aで生産していた製品を、海外の工場Bで急遽生産を開始する」という局面をイメージしてみてください。工場Bの施設設備は十分か、要員の確保(増員等)が可能か、サプライヤからの調達は機能するか、顧客へ納品する物流面についてリスクはないかなどの様々な課題を克服して、生産を開始することとなるわけです。当然のことながら、災害発生後に準備開始することは非現実的で、また平時から臨時生産訓練を実施していたとしても、訓練は限られた場面設定で実施することから、実現は難しいと思います。
これは筆者の考えですが、もし代替戦略を検討するのであれば、平時から生産拠点の分散化をするという「経営戦略」を採用しなければ(採用出来なければ)難しいのではないかということです。これはあるメーカーの例ですが、工場Aの代替生産を工場Bで行った結果、同じレシピで生産しているにもかかわらず、微妙に製品の品質に差異が出たという例も報告されています。この点からも、代替戦略がいかに例外的な戦略かをご理解頂けると思います。
また次に重要な視点は、そもそも自社事業や製品の内容によっては、代替戦略が適しない場合もありうるという点です。半導体などの少量多品種の製品を生産している場合などは、そもそも代替戦略を採用すること自体、経営の観点・コスト面から非現実的です。このような場合は、各拠点の防災力を徹底的に向上させる「現地復旧戦略の強化」をその主眼とすべきなのです。

3:リスク管理の基本に帰る

最後に現地復旧戦略や代替戦略の双方に共通の視点ですが、全てのリスクに対して全方位でその対策を実施することは、経営・財務体力の面から困難性を伴うので、自社にとっての重要リスクの絞り込みがやはり重要になるという点です。そして同時に、公的ガイドライン依存型、テンプレートあてはめ型の防災・BCPを卒業し、平時のリスク管理体制と防災・BCPの諸活動と関連付けて捉えていくべきなのではという点です。
現地復旧戦略や代替戦略の問題は、リスク管理の基本である「リスクとして想定した事態(災害の被害想定)」と「実際に発生した事態(被災時の実際の被害)」の差異を自社の「対応可能な範囲に抑制する」という点を念頭において議論されるべきだと思います。平時の経営として被災リスクを踏まえてどのような戦略を採用し、どの程度の先行投資が必要で、これが経営環境を踏まえて可能か否かという議論を経て、経営判断として意思決定すべきなのではないかと考えています。

森総合研究所代表・首席コンサルタント 森 健

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