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地震時の建物被害を安全に・早く確認するために その1 | KKEの 企業防災・BCPコラム

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地震時の建物被害を安全に・早く確認するために その1

地震時の建物被害を安全に・早く確認するため、私達はお客様とともに様々な取り組みをしています。今回は、建物に地震計を設置し、建物被害を評価する建物被害評価システムについてご紹介します。本システムは工場をはじめとする建物に地震計を取り付けて、地震発生時に建物の揺れを計測し、その計測結果を解析して建物の被害を評価し建物の立ち入り可否を推定します。そしてその推定結果を関係者にメールで配信するシステムです。

 

私たちはシミュレーション(時刻歴応答解析)により工場などの建物の地震時の被害を評価し補強の必要性を検討しています。シミュレーションでは建物の固有周期と地震の周期の共振現象を扱っており、建物の剛性や質量のモデル化の妥当性が解析結果の精度に影響します。建物に地震計を取り付けて地震時の挙動を計測できれば、どうしても含まれてしまう不確定要素を把握して、より精度を向上させることができます。当社が設計した建物のお施主様に地震計での観測をおすすめしたこともありましたが、そのときは実現しませんでした。

 

3年前、当社主催のイベント「KKE Vision 2018」において東京大学の楠浩一先生の構造ヘルスモニタリングシステムのご講演を聴講されたお客様から「楠先生の方法を用いた建物の被害推定」のご相談があり、「渡りに船」とばかりに取り組みました。

 

地震計の選択には苦労したのですが、以前「地震サブトン」※1の開発で協業したこともあった白山工業株式会社様(以下、白山工業)の「IoT地震観測サービス」を利用することで地震計にかかるコストを大幅におさえることができました。そして白山工業の地震観測技術と当社のシミュレーション技術を組み合わせることで実現の目途がたちました。ただ実現するまでには、地震計の計測結果と被害の関係を評価する難しさに加えて、地震計自体の電池の耐久時間や使用環境温度などの多くの課題に直面しました。ようやく今年1月に本システム※2が稼働し計測の第一報が届いたときには思わぬ感動もありました。

 

このシステムの目的は地震直後に建物の被害の定量的な推定結果を関係者で共有し、立ち入りが可能かどうかを判断することですが、当社はシミュレーションのモデル化の妥当性も確認することができます。現在の被害推定はどちらかと言えば安全側(被害を大きめに)推定して連絡するようにしていますが、今後の継続的な計測と評価を繰り返すことで、より現実的な推定結果に近づけていけると考えています。

 

そして、地震災害時に作動するシステムにとって最も重要な関心事は、災害時に確実に稼働することです。しかし地震時に本システムが確実に稼働するかどうか(システムの冗長性)は100%とは言えません。その理由は、100%の稼働を保証するためには、本システムを構成する加速度センサー、加速度センサーからの通信、サーバー(データセンター)、サーバーからの最終ユーザへの通信、そしてインターネット網などが、災害時に、どれも欠けることなく健全性を保つ必要があるからです。そして、システムの冗長性を高めるためには、これらのシステムを構成する要素を多重化する必要があり、相応の検討とコストが必要となります。多重化にかかるコストはお客様にとっては大きな負担となりますので、現状では災害時の完全な稼働は保証せず、免責事項として扱われているのが一般的です。私たちは、シミュレーションによる被害予測を別系統で並行して実施することで、システムとしての冗長性を向上させるための研究開発を進めております。次回、途中経過をご報告します。

※1 地震ザブトンVR記事:https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1812/19/news023.html
※2 株式会社 構造計画研究所様 導入事例:https://www.hakusan.co.jp/solution/casestudy/kke.html

2021年8月 株式会社構造計画研究所 企業防災チーム

 

 
           
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