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新たに防災・BCPを担当される皆さんへ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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新たに防災・BCPを担当される皆さんへ

4月は定期人事異動の季節です。本号は、多くの企業・団体で今月から新たに防災・BCPを担当される方々、例えば防災・BCP担当役員様から、実際にBCPの改定や委員会事務局を担われる実務担当者の方までに向けて、防災・BCPを担当される最初の一歩について、いくつか重要な視点をメッセージスタイルでご提示したいと思います。

視点1:自組織の防災・BCP上の弱点を確認しましょう!

防災・BCPの取組みは、端的に申し上げると「自然災害」というリスクにどのような対策(リスク対策)を用意して備えるかという活動です。従ってBCP(事業継続計画)という計画を作ればそれでよし!というわけではなく、実際に被害を抑制し、発災後に臨機応変に対応できる能力を自分たちの組織に備えてもらうところがゴールなのです。

しかし現実の各企業や自治体の防災・BCPの状況を概観すると、本質から遠ざかってしまい課題を抱えているケースも少なくありません。

具体的な課題の例としては、①BCPを策定した後そのまま放置している(その結果、BCPという計画文書は更新されず、訓練で検証もされず、組織内に浸透もしていない)というものや、②BCPというタイトルの文書を策定してはいるが、内容は防災的な内容(人と施設・設備に関すること)に終始しており、自組織の事業や業務に踏み込んだ内容になっていないなど。また③自組織のBCPとしては一定の品質を確保してはいるものの、サプライチェーン(企業でいえば取引先、自治体でいえば関係団体など)の事業継続力を考慮したBCPになっていないなどの場合もありますので注意が必要です。

防災・BCPのご担当になられた方の、第一歩としては前述の弱点例も含め、自団体の弱点の正確な把握が必要になります。

視点2:弱点確認のために必要なインプットをしよう!

第一歩として我が組織の状況・弱点を正確に把握するためには、防災・BCPに関する基本的な考え方をインプットしておく必要があります。

まずおすすめなのは「政府のガイドライン」を熟読して基本的な考え方・概念を確認することです。この点、内閣府防災担当から、非常によく整理されたガイドラインが出ていますので、ご紹介したいと思います。

企業向けには「事業継続ガイドライン」、自治体向けには「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」というガイドラインが出されています。実は、防災・BCPに関しては、企業の方は自治体用のガイドラインを、自治体の方は企業用のガイドラインを参照することが非常に参考になりますので、可能であれば双方を熟読されると良いと思います。

次に、自社の取引先(顧客)から求められる「BCPアンケート」の各項目に沿って、自社の取組み状況を再点検することも重要です。顧客に対して製品やサービスの供給責任を果たすという観点で現実に要請されているのが「BCPアンケート」に他なりません。このアンケートに真摯に向き合い、弱点・課題を見つけ、その課題を着実に解決していくことが今後の皆さんに求められていくのです。

さらに【視点2】に関連してもう1点のおすすめ事項です。防災・BCPは広い意味の「危機管理」の一環と位置付けられますが、この「危機管理」の考え方をしっかり習得することがとても大切で、そのためにご自身として座右の書のような「危機管理の教科書」を持たれてはいかがでしょうか。

危機管理という分野は「事例検討」を通じて発展してきたという経緯もあり、理論的な議論も重要ですが、重要なのは「答えは現場事例の中にある」という視点なのです。従って「現場経験」を積まれた方の著作から自分の教科書を選定すると良いと思います。

筆者自身、初めて危機管理の現場に入った静岡県庁防災局勤務時(2003年4月)、なかなか良い教科書がなく困った経験をしています。実はそのとき同じ職場の県職員Aさんがが、筆者にプレゼントしてくださった本があります。それは佐々淳行先生の『危機管理のノウハウ』です。

実はこの原稿を書いている今もこの3冊の文庫本(注:もちろん単行本もある)を目の前に置いています。プレゼントされたあの日から現在まで、この本は私にとっての最高の『座右の書』となっています。『危機管理のノウハウ』の中には実戦経験に裏打ちされた様々なノウハウが、歴史的事件も含めて引用されながら解説がされていて、2021年の現在でも色あせない名著だと思います。ぜひお手に取ってみてください。

防災・BCPの分野は、上手に対処できて当たり前、ひとたび失敗したら減点と批判がまっているという厳しい分野かもしれません。しかも現在は、人類全体が新型コロナウイルス感染症との壮大な危機管理を展開中です。2021年4月からこの戦いに参加した皆さんも歴史の一主人公として、様々な過去の事例や先人の取組みを参考に、現実の防災・BCPの分野で成果を出して頂きたいと切に願っています。

 

森総合研究所代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
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