関東地方では、各河川で鮎釣りが解禁となり、筆者も仕事の合間を縫って、週末は太公望となる季節が始まります。同時にこの季節は、風水害の発生頻度も高まり始め、台風も徐々に日本列島に影響を及ぼし始めるタイミングです。
今回は、そろそろ再点検すべき「風水害リスク」について考えてみたいと思います。
風水害リスクにおける平時の防災・BCP
まず平時の備えとしては、自社拠点のリスクを正確に把握するよう努めましょう。周辺地域も含めてどのような立地条件か、周辺河川や湖沼の治水対策は十分になされているか、その地域には過去にどのような風水害が発生しているかなどを確認しましょう。また過去の歴史を遡って、この土地がもともとは何だったのか、例えば昔は沼だったとか、山を削って平らにした場所であるなどの過去情報も非常に有用です。
次に、拠点自体の対策を再点検しましょう。外周・外壁を確認し、亀裂などがないか点検しましょう。また止水板や土嚢などの準備は大丈夫でしょうか。設置訓練で従業員の方々は対応能力を向上させているでしょうか。浸水時に備えた受配電設備などの「重要設備」の浸水対策は対応済みでしょうか。半製品や原材料は、浸水しにくい場所に保管・管理されているでしょうか。
風水害リスクにおける有事の防災・BCP
台風が発生するなど風水害リスクが高まってきたら、まずは組織的な情報収集を開始しましょう。気象情報、河川の水位に関する情報、地元自治体の発信する情報など、情報収集項目については事前に整理しておくことが重要です。
また従業員の安全を最優先とし、出退勤に関する意思決定も早め早めに行いましょう。午後に台風が接近する場合には早めに退勤を指示し、翌日午前中に接近するケースでは無理な出勤はしないように前日から周知徹底することが大切です。
同時に、浸水防止・被害軽減のための各種対策を具体的に発動することも必要です。移動可能な施設・設備や重要備品は浸水しない場所へ移動し、止水板や土嚢を設置、周辺の排水溝も落ち葉などによる目詰まりが起きていないか確認しておきましょう。気象条件によっては「風対策」が重要になるケースもあるので、気をつけましょう。
万が一被害が発生した場合には、各社の規程に則り「対策本部」を設置し、防災・事業継続対策を全社一丸となって進める必要があります。従業員の安否確認、施設・設備の被害確認と復旧業者手配、拠点間の支援・受援の調整、健在拠点による代替戦略の発動など、対応項目は多岐にわたります。特に風水害の場合は、細かい粒子の砂泥が拠点内に入り込み、復旧の大きな妨げになる点にも注意が必要です。
風水害対策としての防災・BCPのまとめ
風水害対策として防災・BCPを考える場合、浸水させない対策と浸水後の復旧対策の2つの視点で検討することが大切です。そして、地震対応同様に、これらについて「シナリオ型」で被害想定を整理し、時系列に対応戦略をまとめておくことをおすすめします。
ここで重要な点は、時系列に想定事態を整理していき、可能な限り想定しきっておくことです。そして、実務家の危機管理・決断の鉄則に従い、現在から未来に向かって検討していくことが大切です。逆に、結果から考えることを重視した「結果事象型のBCP」の発想にとらわれすぎると、現在(結果)から過去を視がちとなり、通常の意思決定とは逆方向の視点となって見落としが発生する懸念があります。
どのような危機に対処する場合にも「戦略的な対応」であることが求められます。風水害は地震と異なり「リードタイム」がある場合が多いです。事前に全社的な戦略・基本方針を時系列に整理し、被害を最小限度に止めるための防災・BCPを目指しましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
以上
森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健
具体的な水害対策の1つとして、河川水位をリアルタイムに予測できるシステムをご提案しております。
豪雨の情報収集に欠かせない公共情報について活用時の課題やリアルタイム洪水予測でできることを下記記事にまとめておりますので、あわせてご覧いただけますと幸いです。