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感染症パンデミックとBCP~忘却の彼方にいく前に~ | KKEの 企業防災・BCPコラム

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感染症パンデミックとBCP
~忘却の彼方にいく前に~

今回も、防災・BCP・リスク管理の専門家の森健さんによる連載記事をお届けします。

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季節は進み、寒さを感じる日々が多くなってまいりました。地域により差はあるものの、この冬もまたインフルエンザの流行が繰り返されています。

2020年、私たちは新型コロナウイルスという新たな敵と遭遇し、咳エチケットとか、三密とか、新しい生活様式などと必死に対策を実行していましたが、それも今は昔、最近は駅などで気を付けていないと、他者の飛沫に暴露されることも珍しくはありません(要するに咳エチケットをしてない人がいるということです)。

感染症パンデミックは周期性

新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)は、概ね10年から40年程度の周期で発生しています。前回のH1N1型の「新型インフルエンザ」の流行は2009年から2010年頃です。それに10年をプラスした2019年から2020年には、最初の危険水域に達していたと考えることも可能です(但し新型インフルエンザについて)。

現実にはインフルエンザではなく「コロナウイルス」と戦うことになるのですが、インフルエンザパンデミックがそろそろ来ると備えていた組織と、無防備の組織とでは自ずと初動対応が違っていたのではないでしょうか。

ここでご注意頂きたいのは、今回のコロナ禍はあくまでもコロナウイルスで、新型インフルエンザではないので、こと新型インフルエンザに関していうと依然として2019年頃から危険水域に入ったままで、時の経過とともにリスクは高まっていると考えたほうが危機管理的にはよいのではという点です。

まずは季節性のインフルエンザ対策の徹底を!

新型インフルエンザ対策特別措置法を一部改正し、新型コロナウイルスを「新型インフルエンザ等」に含めて様々な対応をしたように、インフルエンザもコロナウイルスも対策の基本は個人単位でも組織単位でもほぼ同じです。

まずは日々の生活において、季節性のインフルエンザに罹患しないように、または罹患した場合であっても職場内で感染拡大しないように留意することが重要です。従業員の皆さん一人ひとりの対策の積み重ねが大きな成功につながるのです。これを職場の安全衛生委員会を通じて徹底していただくことは、健康管理の観点からも、事業継続の視点からも大切だと思います。

そして季節性インフルエンザの対策に本気で取り組むことが、次のパンデミックへの備えにつながる点を強調しておきたいと思います。ここで重要なのは「本気で」という点で、「体調が優れないのに無理して出社し、職場がパンデミックに!」という状態を全力で回避すべく、平時の安全衛生管理の品質を高めることが求められます。

コロナ禍の徹底検証と検証・改善結果の定着を!

さらにもう1点お願いしたい点は、今般の新型コロナウイルスパンデミックにおける自社対応の徹底検証と、検証結果に基づく改善事項を自社組織に定着させるということです。

出社とテレワークの使い分け、業務ごとのバックアップ体制強化(主担当・副担当体制の形骸化防止)、各種感染予防や感染拡大策の準備、必要な対策用品の備蓄と使用できるような訓練(特に防護服は着脱が難しい)など、様々な視点で改善すべき点はまだまだ残っています。事業継続計画も、他のリスクへの対処と共通化できるものは共通化し、感染症特有の性質(施設は被災せず、人が被災する)への考慮に基づく対策の再検討なども重要です。

咳エチケットとともに「社会機能維持者」という言葉も使われない今日この頃ですが、企業単位のみならず、製品単位でも社会的要請・社会機能維持の観点から絶対に共有停止にできないものは一定程度存在します。これらの製品はどのような過程を経て顧客に届いているのか、その過程の中に「感染症」はどのようなリスクをもたらすのかを今一度総点検しておきましょう。忘れてしまわないうちに。。。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。皆様、くれぐれもご自愛ください。

 

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 

 

 
           
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