災害リスクコンサルティングサービス

初動対応を考える③ 初動対応と事業継続の結節点 | KKEの 企業防災・BCPコラム

KKEの 企業防災・BCPコラム

初動対応を考える③ 初動対応と事業継続の結節点

企業各社において「どこまでが初動対応で、どこからが事業継続対応なのか」という論点について、時に議論されることがあります。
内閣府の「事業継続ガイドライン」においてもこの点については整理されていますが、今回はBCPの実務的視点で特に気をつけて頂きたい点をいくつかご紹介していきたいと思います。

まず再点検すべき本質的な課題

初動対応と事業継続対応の相違点について議論する前に、まずは本質的な課題について再点検をしましょう。

初動対応は一般的に災害発生直後の最初の対応を指し、事業継続対応はその次の段階の「事業継続」つまり事業・業務を中断しないように、あるいは中断した場合も早期に元に戻すための対応を指します。

しかし多くの企業において、この初動対応中心に計画を策定し、タイトルだけBCP(事業継続計画)としてしまい、経営トップには「BCPの策定が完了しました」と報告して会社全体でほっとしてしまっているケースが非常に多いという点にご注意頂きたいと思います。

言うまでもなく、BCPの本質は「事業」についての災害対策上の弱点補強にあるので、事業への踏み込みが甘いと、災害時に自社事業に「致命的な影響・被害」を発生させるというリスクを受容することになってしまいます。十分に事業視点での分析がなされているかにつき点検をしておきましょう。

どこまでが初動対応で、どこからが事業継続対応か

その上で、どこまでが初動対応で、どこからが事業継続かという点については、一般的な理解としては、直後の人命最優先、施設・設備の被害把握と応急対策最優先の対応(防災対応)までを初動対応と呼び、次の段階で必要となる復旧方針の検討や代替戦略・現地復旧戦略のいずれを採用するかという判断とその実行の段階を事業継続対応と呼んでいます。

これに実務的な視点を加味するとこのような理解になるのではないでしょうか。災害発生直後は防災的な対応、つまり安否確認や施設・設備の被害把握を中心に対応していきますが、この対応に全従業員があたる場合もあれば、余力がある場合や、その者の立場によっては、早い段階から事業継続のことも検討を開始し、必要な準備を進めたりする場合もある。なぜなら、早めに指示・対応していかないと、初動対応がひと段落した段階でスムーズに事業継続対応に移行できなくなってしまいます。

重要なのは一貫した対応戦略

初動対応/事業継続対応の議論は、あくまでも災害に対応するための一貫した対応戦略の中で、それぞれが占める「割合」の問題、「濃淡」の問題だと筆者は理解しています。

例えば「災害発生後最初の3日間は完全に防災対応のみに終始し、4日目以降は防災対応は一切休止し事業継続対応に専念すればよい」というシナリオは、実務上は非常に想定しにくいものです。

実際には、最初は資源のほとんどを防災対応に投入し、その後時間の経過とともに徐々に事業継続対応が占める割合が増えていく。しかし時間が1~2週間経過した場合であっても、状況によっては防災対応を継続しなければばらないこともある、という理解でよいのではと考えています。

そして大切なのは、言葉の定義・概念より、対応戦略そのものを時系列に予め整理して組織内に共有しておくことだと考えています。

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
災害リスクコンサルティングサービス

大地震に襲われたら工場施設はどうなるのか、そのために何を確認すべきか等をまとめた
「BCP担当者のための工場施設の地震対策 基礎講座」資料をダウンロードいただけます。

       
「工場施設の地震対策」資料ダウンロード