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災害時の全社統制を考える③ 「機能しないBCP」の感染拡大を食い止めろ! | KKEの 企業防災・BCPコラム

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災害時の全社統制を考える③ 「機能しないBCP」の感染拡大を食い止めろ!

東日本大震災発生以降も、熊本地震、大阪北部地震など被害をもたらず一定規模以上の地震災害が継続的に発生しています。また気候変動の結果、関東・東北豪雨、九州北部豪雨、西日本豪雨などの風水害も頻度と影響度を増し、さらに今般のコロナ禍は事業継続計画(BCP)の重要性を我々に突き付けています。
これらの自然災害的要素に加え、安全保障環境の変化への対応、法令や各種ガイドライン・ソフトロー類への対応等も各企業特に上場企業は求められ、これらの経営環境変化への対応不備が事業の存続に影響する状況が続いています。

未だに一定数存在する「機能しないBCP」の問題

上記のような経営環境の変化が継続している中で、各企業はBCPの実効性向上について努力を継続してきました。しかし反面、実際に災害時に活用できないBCPや、定期的なアップデートがされていないBCP、そしてそもそもBCP(事業の継続計画)なのに実態は防災計画となっているもの(筆者は「名ばかりBCP」と呼んでいます)も多く存在しています。

機能しないBCPの問題については、筆者はコンサルタントとして独立する前から、様々な形で警鐘を鳴らしてきました。もっと実務的な議論をしたほうがよい、被害想定の議論を延々とするのはやめよう、実戦経験のない受け売りコンサルには気を付けようなどなど。このあたりの議論は、手前味噌ではありますが、少しずつ社会に浸透してきたのではないかと感じています。

その一方で、無意識のうちに、かつ悪気なく、この機能しないBCPを普及してしまっているというケースが存在しています。今回は機能しないBCPの発生原因ではなく、機能しないBCP(BCPに関するやや誤った考え方や方法論)が「感染拡大」をしている現状と、感染拡大を阻止する方法論について考えてみたいと思います。

グループ経営におけるBCP推進体制

機能しないBCPの感染拡大の最も典型的な例が、親(親会社)から子(グループ会社)へ感染拡大するというものです。本来は「BCPのグループ内浸透」という表現を用いたい場面ですが、親会社から子会社に間違った考え方が伝わってしまい、グループ会社をミスリードしてしまっているという状況は意外に多く見られ、かつこれに当事者は気づいていないことも多いのが現状です。

グループ経営の原則論からすると、親会社の基本方針にグループ会社が歩調をあわせることはもちろん重要です。しかし「戦略の失敗は戦術では補えない」ので、そもそも「親会社のBCPの品質」が担保されているかについて多角的な視点から検証することが大切で、現実にはこれを怠り、有名シンクタンクやビックネームのコンサル会社に依頼して策定したBCPだから大丈夫と「タカをくくっている」ケースが多いように感じています。

のんきに過ごす親の下で、子(グループ会社)は大いに悩んでいます。グループ全体の規模感が大きくなればなるほど、基本的にはグループ会社側にも一定の裁量と権限を付与すべきなのですが、親会社の危機管理体制にグループ会社の体制もあわせさせたり(「機能しない対策本部ウイルス」がこうして感染します)、また親会社で活用した「機能しないBCPの雛形」にそってグループ会社にBCPの策定を求めたり(この際に往々にして「事業視点欠落ウイルス」の感染が起こります)。

親会社のBCPが、親会社の社内で全社横断的な検討を経ていないような場合、策定・維持管理について経営層の関与が弱い場合、親会社の担当者がコンサル選定・起用方法にあまり精通していない場合などに、このような事態が起きている点に注意が必要です。

親子のコミュニケーションの重要性~親の責任と子の矜持~

やはり親会社は「親の責任」として、グループ会社にBCPの浸透を図る前に、自社のBCPの実効性について再点検をする必要があるでしょう。「出来ていると思い込む」こと自体が最大のリスク要因ですが、兎にも角にも、謙虚にBCPと向き合い、他社のレベル感と比較し、同時に今までと異なるコンサルにセカンドオピニオンを求めるなどの姿勢が重要です。

一方、子(グループ会社)のほうは、素直にグループ方針を尊重しつつも、親のいいなりになってはいけない場面では、グループ会社としての矜持を忘れないようにしたいものです。

親会社と子会社の関係性は、親が偉いというものではなく、単に役割分担と責任・権限の違いだと筆者は考えています。そして親が間違えていたら、親の心情とプライドに配慮しつつ、子として「それは違うぞ」とはっきり指摘することも時には必要ですし、これが真のリスクコミュニケーションにつながっていくのです。

親子間で「言いたいことが言える良好な関係」を構築することこそが、この問題の感染拡大防止の最大のポイントではないかと感じています。

以上

森総合研究所 代表・首席コンサルタント 森 健

 
           
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