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BCPのレベルはどう把握する?(番外編) 試してみた | KKEの 企業防災・BCPコラム

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BCPのレベルはどう把握する?(番外編) 試してみた

BCPのレベルはどう把握する?(2)建物に備わるレジリエンス性能の把握方法」の記事で、建物のレジリエンス性能を簡易に評価できる方法として、「BCPレベル指標」を当社の技術担当がご紹介させていただきました。建物・設備・ソフトの事前の災害対策度合いによって簡易にBCPレベルが評価できる方法です。今回は、これを読んだ営業担当が試しに架空の建物のBCPレベルを評価してみました。

BCPレベルを評価する

1.仮定条件

まず、BCPレベルを把握する建物Aを以下のように仮定しました。
・鉄筋コンクリート造
・旧耐震基準設計
・耐震診断実施済み、Is値は0.6以上

また、本評価では災害種別を地震、風、雪、津波・洪水、落雷、火事から選択します。今回は地震を対象としました。震度6弱程度をイメージしてみます。

 

2.BCPレベルの評価

さて、大地震が起こった場合の建物Aについて、被害程度と復旧時間を考慮したBCPレベルを評価してみます。

 

2-1.被害レベルと復旧日数をマトリクスから選ぶ。

こちらの記事内表2(レジリエンス性能表)で「被害レベル」を、図2(建築学会で提示されている復旧日数・BCPレベルの簡易評価手法)でそれに対応した「復旧日数」を探します。

建物Aは耐震診断の結果Is値0.6以上ですので、倒壊の危険は少ないはずです。ところがこの表2では、主要構造、非構造部材、設備に分けてより詳細な被害想定が求められています。ここでは仮に主要構造物を「小破」としますが、厳密には、想定する地震に対してその建物がどのような被害様相になるのかを把握しておく必要があるということになります。

主要構造を「小破」と仮定したことをもとに、その他部材や設備等について以下のように仮定しました。

【災害種別】
地震
【抵抗力】
①主要構造物「小破」  →復旧日数(図2より)30日
②非構造部材「軽微な被害」 →14日
③設備「無被害」 →0日??
④マネジメント「定期的に訓練している」 →0日
【復旧力】
⑤構造「モニタリング等により自動的にエビデンスとして残す」 →0日
⑥設備「被災後に人的にチェックを行う仕組み」 →1日
⑦マネジメント/迅速な復旧の仕組み「設計図書」 →0日

 

2-2.以下3点の合計から、総合的な復旧日数を計算する。

・主要構造部の復旧日数:30日
・非構造部材の復旧日数と設備の復旧日数で大きい方の値:14日
・復旧力の各項目による復旧日数のうち最も大きい値:1日
合計:30+14+1=45日 ・・・これを「常時の性能の90%に回復する期間」とする。

 

2-3.同記事内の表1(BCPレベル指標の評価基準)からBCPレベルを評価する

BCPレベル:★(90%の復旧が6ヶ月以内)

今回のBCPレベルは、星1つを獲得という結果になりました。

 

振り返ってみると

星1つという結果は、標準レベルより上とされていますので、BCPレベルは高いほうになります。Is値0.6を満たす建物で、設備被害はゼロと想定しましたので、納得感があります。それでも90%まで復旧するには45日程度かかる可能性があるということが目安として分かり、事業継続上、できる対策を打っておく必要性を感じました。

また、計算の過程で気づいたこととしては、主要構造物が「小破」になると星のランクが一つ下がるほどの影響があることです。

主要構造物の「小破」とは、一般的に「若干の変形は残るが、余震には耐える。仕上材等にはある程度の損傷を受ける。(RC造の場合)」という状況とされています1)。よって、非構造部材も何らか影響を受けるとすると「軽微な被害」で7~14日かかることになり、これでさらに星が減り、結果的に星1つになりました。

主要構造物とは、柱梁といった建物を支える屋台骨であり、耐震補強の際には最も気にかける部分ですが、事業継続を考える上では非構造部材や設備の対策もきちんとしておかなくてはいけないことが改めて分かります。

また、そもそも想定する地震に対して、建物の被害様相が想定できていなければこのBCPレベルが評価できないことも分かりました(BCPレベルが評価できていない場合、未評価と位置づけられ星ゼロとなります)。耐震診断からもう一歩踏み込んで被害想定ができていると、ハード対策、ソフト対策ともに、BCPレベル向上のためより効果の高い打ち手を考えられそうです。

さらに、構造物について「モニタリング等により自動的にエビデンスを残す仕組み」を構築しておくと、復旧日数が1日短くなりました。最近は建物にセンサーをつけ、地震の揺れによって建物がどの程度被害を受けているか予測する仕組みが出てきています。当社も開発し、被災後の初動対応を支援する仕組みとしてお客様にて運用を開始されています。

皆さまもぜひ、自社の建物でBCPレベル評価を試してみてはいかがでしょうか?もちろん、建物被害をより詳しく把握したい、建物モニタリングに興味があるという場合はお気軽にお問い合わせください。

※本記事で参照した「BCPレベル指標」については、現在も建築学会で議論されている内容を元に構造計画研究所が独自にブログ記事で取り上げさせていただきました。本記事の評価結果についてお気づきの点がございましたら、当社までお問い合わせください。

参考文献

1) 日本建築構造技術者協会「安心できる建物をめざして JSCA性能設計【耐震性能編】」

以上

株式会社構造計画研究所 企業防災チーム 守武祐子

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